「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」とは、将来の成功や目的を果たすために、長い間の苦難に耐え忍び、努力を重ねることを意味する四字熟語だ。文字通り解釈すれば、「薪(たきぎ)の上に臥(ふ)し、苦い胆(きも)を嘗(な)める」こと。言葉の響きこそ重苦しいが、その根底にあるのは徹底したリアリズムと冷徹なまでの目標執着である。
舞台は紀元前5世紀の中国、春秋時代の呉(ご)と越(えつ)の死闘に遡る。呉王闔閭(こうりょ)が越王勾践(こうせん)に敗れて戦死した際、その息子である夫差(ふさ)は父の無念を忘れないため、あえて硬い薪の上で寝起きし、復讐の念を燃やし続けた。これがいわゆる「臥薪」だ。その後、見事に復讐を果たした夫差に対し、今度は敗れた越王勾践が部屋に苦い胆(熊の胆)を吊るし、毎食事ごとにそれを舐めて敗北の屈屈を記憶に刻み込んだ。これが「嘗胆」である。
つまり、呉と越という終生のライバル同士の壮絶な執念が合体してできた言葉なのだ。単なる悲惨な耐乏生活の推奨ではない。明確な反撃のヴィジョンを持った「牙を研ぐ期間」こそが、この言葉の真髄と言える。