味の構造そのものにも、近代ガストロノミーの影響が色濃く反映されている。
丼が出された瞬間、目を奪われるのは表面を覆う真っ白な細やかな泡(エスプーマ)だ。スープの表面を泡立てることで、口に含んだ瞬間のテクスチャーが劇的に柔らかくなり、同時に閉じ込められていた香りが一気に鼻腔へと弾ける。このフレンチのソースメイクに近い手法が、牡蠣の持つ芳醇なアロマを何倍にも増幅させている。
さらに仕上げに回しかけられる「自家製牡蠣オイル」が決め手となる。低温のオイルに牡蠣の香りとニンニク、ハーブ、あるいは和の山椒や柚子のニュアンスを移したこのオイルは、スープの表面に膜を張り、最後までアツアツの状態で味の変化を楽しませてくれる。最初はクリーミーな泡を味わい、途中でオイルを混ぜ込むことで一気に力強い味わいへと変化する。まさに計算し尽くされた立体的な味覚のドラマがそこにある。