1980年代から1990年代にかけて、藤谷美和子という女優が放つ存在感は唯一無二だった。映画『海峡』や『つみきの箱』、数多のTVドラマで魅せた陰のある繊細な演技は、同世代の女優の中でも頭一つ抜けていた。さらに歌唱面でもその才能を開花させ、『愛が生まれた日』は今なおカラオケの定番デュエットソングとして親しまれている。
だが、その高い芸術性と感受性の豊かさは、芸能界という特殊な環境下で大きな負担となっていった。2000年代初頭、テレビのバラエティ番組や公の場で見せた言動が「プッツン女優」などと偏見を交えて報じられ、メディアの格好の標的とされた。そして2003年のいわゆる皇居周辺での騒動を機に、彼女の本格的な休業状態が始まったのである。