ドアを開けた瞬間、目が沁みるほどの煙が出迎える。上着を袋に密閉し、パイプ椅子に腰を下ろす。この一連の儀式こそが、味楽の真骨頂だ。
現代の飲食業界では「無臭」「個室」「スタイリッシュ」がもてはやされる傾向が強い。しかし、味楽はその対極を行く。モクモクとした煙の中で肉が焼き上がる音を聞き、タレが焦げる匂いに包まれる。このライブ感こそが、食欲を極限まで引き上げる最高のスパイスなのだ。服に匂いがつくことなど、誰も気にしない。むしろ、その匂いすらも満足感の余韻として持ち帰るのが、この店の正しい嗜み方と言える。