もともとはビジネス現場の呼び出しツールとして誕生した移動体通信端末、ポケットベル。それが女子高生をはじめとする若者たちの手に渡った瞬間、無機質な機械は熱狂的なコミュニケーションの道具へと変貌を遂げた。1968年に日本電信電話公社(現在のNTTドコモなどのルーツ)がサービスを開始し、後に東京テレメッセージなどの民間事業者が参入。電気通信事業の自由化に伴い、市場は爆発的な拡大を見せた。
「0510(今どこ?)」「0833(おやすみ)」といった数字の語呂合わせの中でも、最も愛されたのが感謝を伝えるメッセージだ。文字入力がまだ不可能だった初期、プッシュホンを叩いて打ち込む「39」のふた文字は、単なる記号を超えた温もりを持っていた。数字だけのやり取りが持つ独特の奥ゆかしさこそ、日本の通信史における最大の技術的かつ文化的ブレイクスルーだったと言えるだろう。