本作が触れる「優生思想」や「命の選別」という題材は、現代日本における最大のタブーの一つだ。制作過程においては、出演者やスタッフの間でも幾度となく激しい議論が交わされたという。単に加害者を非難して終わるのではなく、「自分の中にも同じような歪みや冷淡さがないか」という自省を促す構造が組み立てられた。
撮影現場では、重い題材ゆえの張り詰めた空気が漂っていた。施設内の清掃風景や日常業務の反復といったディテールに徹底的にこだわり、観客に「これは遠い世界の出来事ではない」と思わせる現実感を創出。禁忌へ肉薄する裏側には、表現者としての覚悟と倫理的な誠実さが常に共存していたのである。