講談社現代新書から刊行され、異例のロングセラーとなった『生物はなぜ死ぬのか』。この著作で提示された論理は極めて明快でありながら、読む者の死生観を覆す。もし個体が死なず、有限な環境の中で増殖し続ければ、新たな遺伝的多様性を生み出す余地は失われ、環境変化によって種全体が絶滅へと追いやられる。つまり、個体の死こそが、次世代へとバトンを渡すための必須条件なのだ。
生命の歴史は約38億年前に始まった。最初の単細胞生物には、現代私たちが考えるような個体の死は存在しなかった。単純な分裂を繰り返す彼らは、ある意味で不死だったと言える。しかし、有性生殖を獲得し、多細胞化へと舵を切った瞬間から、生物は「あらかじめ死ぬようにプログラムされた身体」を手に入れた。死ぬ能力を獲得したからこそ、生物は爆発的な多様性を獲得できたのである。