古来より日本の民話や妖怪譚に登場する「ぬらりひょん」は、他人の家に勝手に上がり込み、茶を飲み、あたかも主であるかのように振る舞う怪異として知られてきた。しかし、忠見朋氏の手によって再解釈された現代の「ぬらりひょんの住む家」において、その存在はコミカルさを一切排除した「家庭破壊の狂気」へと変貌を遂げる。
外部からやってきた怪異が、家族の精神をじわじわと病ませ、歪め、支配していく姿は、伝統的な和製ホラーの湿り気と、人間の心理的脆弱性を突くサイコホラーの真髄が見事に融合したものだ。誰の身にも起こり得る身近な空間の崩壊を描くからこそ、読者の心に生々しい恐怖が刻みつけられるのだ。