2026年春、全国からのスカウト合戦が過熱するなか、彼女が選んだ進路は地元の公立校・岡山県立津山高校だった。強豪私立への進学が常識とされる陸上界において、この選択は多くの関係者を驚かせた。だが、そこには明確な意図があった。喧騒から距離を置き、過剰な露出を避け、自らのペースで練習環境を整える。プライバシーを保護しつつ競技に没頭するための防波堤を、自らの意志で築いたのだ。
地元で育まれた静寂は、彼女に思考する時間を与えた。コーチや監督の指示にただ従うのではなく、自らの心身と対話し、データと感覚を擦り合わせる。「他人に決められた走り」ではなく「自分の走り」を追求する姿勢は、高校3年間を通じてより強固なものへと昇華していった。