『オニギシ』という独特なタイトルの背景には、横山裕自身の幼少期における実体験が色濃く反映されています。まだ幼く言葉がおぼつかなかった頃、「おにぎり」と上手に発音できず、母に向かって「オニギシ作って」とねだっていた記憶がそのまま曲名になっています。
横山裕の生い立ちは、決して平坦なものではありませんでした。複雑な家庭環境の中で育ち、義父との葛藤や経済的な困窮、祖父母に預けられた時期など、少年期には多くの苦難を経験しています。中学卒業後に建設現場で働きながら家計を助け、ジャニーズJr.としての活動を両立させていた背景には、女手一つで自分と幼い2人の弟を育てようと奮闘する母親の姿がありました。
歌詞の全文を通して描かれているのは、特別な贅沢ではなく「不恰好に握られたおにぎり」「怒られた記憶」「大人になって初めて気づく親のありがたみ」といった、日常の断片です。思春期特有の照れ臭さから、面と向かっては一度も「ありがとう」と言えなかった後悔と、それでも言葉の端々から溢れ出る深い敬愛。関西弁の語り口調で展開されるフレーズは、飾らないからこそ聴く者それぞれの家族の原風景を呼び起こします。