井上陽水の天才的な言語センスは「風あざみ」にとどまりません。『少年時代』の歌詞には、聴き手のイマジネーションを刺激する独創的な言葉が散りばめられています。
代表的なのが、2番に登場する「宵かがり(よいかがり)」という表現です。「宵かがり 夢はあれから 収まらない」と歌われますが、この「宵かがり」もまた国語辞典にはない陽水の造語とされています。夕暮れ時を指す「宵」と、暗闇を照らす「篝火(かがりび)」の風情を掛け合わせたような響きを持ち、夏の夜の胸騒ぎや情熱を鮮明に描き出しています。
さらにサビで繰り返される「私の心は夏模様」というフレーズも印象的です。「夏模様」自体は天候や夏の気配を表す言葉ですが、陽水はそれを自身の「移ろう内面」と重ね合わせました。過ぎ去った季節への憧憬と、大人になってしまった切なさが、これらの詩的表現によって重層的に表現されています。