能町氏が世に出る決定的な契機となったのが、2006年に開設した個人ブログを元にした書籍『オカマだけどOLやってます』の出版です。当時、会社勤めをしながら自らの性別移行や日常の哀喜をユーモラスなイラストと軽妙な文章で綴ったこの作品は、瞬く間にネット上で大きな話題を呼びました。
センセーショナルに扱われがちだったトランスジェンダーの日常を、過度な湿っぽさを排除し、どこにでもいるOLのリアルな日常スケッチとして描いた筆致は、多くの読者に新鮮な衝撃を与えました。単行本化および漫画化によって一躍注目作家の仲間入りを果たし、以降は専業の文筆家・イラストレーターへと舵を切ることになります。
このヒットを皮切りに、雑誌連載やテレビ番組への出演依頼が急増。言葉の選び方の的確さと、世間の欺瞞を突くシャープな批評性が高く評価され、カルチャーシーンに欠かせない論客として認知されていきました。