ネット上の掲示板や知恵袋で定期的に浮上する「Tシャツ裾上げワンコインの真相」を追跡すると、そこには消費者側のいくつかの認知のズレが重なり合っていることが分かります。取材を進めると、最大の要因はファストファッション店舗におけるジーンズやスラックスの裾上げサービスとの混同にありました。
たとえば量販店でパンツを購入した際、「ミシン縫いなら280円〜500円、あるいは一定金額以上で無料」という価格設定が広く定着しています。この手軽なイメージが記憶の中で無意識にスライドし、「同じ裾上げなのだからTシャツもワンコイン程度でできるはずだ」という先入観を生み出しているのです。また、過去に一部のローカルリペア店が新規開店時に客寄せとして実施した限定ワンコインキャンペーンの記憶が、ネット上で尾ひれをつけて拡散し続けている側面も否定できません。
もう一つの誤認ルートは、100円ショップや手芸量販店で販売されている熱圧着タイプのアイロン補修テープです。「500円以内の材料費で自力補修できた」という個人の工作体験談が、いつの間にか「500円でお直しを依頼できる店がある」という文脈へと変質して伝播してしまったケースが多発しています。現在の大手リペアチェーンや専門工房において、一般的な大人のTシャツの着丈詰めを定常的に500円で引き受けている業者は実質的に存在しません。