かつては「3H療法(高血圧・高循環血液量・血液希釈)」と呼ばれる輸液管理が主流でしたが、心不全や肺水腫などの合併症リスクを考慮し、現在は「循環血液量を正常に保つ(Euvolemia)」点滴管理をベースに、分子レベルで血管収縮を抑える薬物療法が確立されています。
脳血管攣縮の予防法(点滴)および治療における代表的な薬剤は以下の通りです。
- クラゾセンタン(商品名:ピヴラッツ):エンドセリン受容体拮抗薬。血管収縮の元凶であるエンドセリンの働きを直接ブロックする新規薬剤として国内で承認され、くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびそれに伴う脳梗塞の発生率を大幅に低下させています。
- ファスジル塩酸塩水和物(商品名:エリル):Rhoキナーゼ阻害薬。血管平滑筋の過剰な収縮シグナルを遮断し、血管を拡張させるとともに脳血流を改善します。脳血管攣縮の治療(ファスジル)として長年にわたり広く投与されています。
- オザグレルナトリウム:抗血小板作用により、微小血管内の血栓形成を防ぎ血流を維持します。
点滴治療を行っても血管狭窄が進行し虚血症状が出現した場合には、カテーテルを用いて脳動脈内に直接血管拡張薬(塩酸パパベリンやファスジルなど)を注入する「動注療法」や、細くなった血管をバルーンカテーテルで物理的に押し広げる「血管形成術(PTA)」といったインターベンション治療が迅速に実施されます。