五鉄の語り部として外せないのが、宝暦十年(1760年)創業の超老舗「玉ひで」だ。歴史的文献によれば、池波正太郎は玉ひでの九代目当主と親交が深く、その軍鶏鍋の味と佇まいから着想を得て「五鉄」を生み出したとされる。創業以来260年以上、一子相伝で守られてきた秘伝の割り下と軍鶏の仕込み技術は、まさに職人技の結晶である。
鳥肉の部位ごとに切り方を変え、火の通り具合と噛み応えを極限まで計算する。安易な柔らかさを求めず、噛むほどに溢れ出る旨味。これこそが江戸っ子が愛した「粋」の味であり、現代のファストフード文化に対する強烈なアンチテーゼとして輝きを放っている。