なぜ、これほどまでに二人の共演は視聴者の心に刺さるのだろうか。当時の撮影現場を知る関係者によると、二人の間には言葉を多く交わさずとも成立する特別なリズムが存在していたという。
『結婚できない男』のリハーサル現場では、阿部寛が現場で繰り出す意図的な「間」や予想外のアドリブに対して、夏川結衣が完璧なレスポンスで打ち返していた。作り込まれた台本を超え、その場で生きている人間のリアクションとして返す夏川の受けの演技があったからこそ、阿部の演じる桑野という強烈なキャラクターが嫌味にならず、愛すべき人物として成立したのだ。カメラが回っていない場所でも互いの芝居に対する深い敬意が漂っており、その信頼感こそが「屈指の化学反応」の真相であったと言える。