賃貸マンションやアパートで壁にカビを生じさせてしまった場合、最も懸念されるのが退去時の原状回復費用です。ネットの掲示板やSNSでは「壁一面のカビで退去時に15万円請求された」「結露を放置していたら全額自己負担になった」といった生々しい被害報告が日常的に寄せられています。
国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、建物の経年劣化や通常損耗(家具の設置跡や日焼けなど)の修繕費用は家賃に含まれており、貸主(オーナー)負担と定義されています。しかし、問題となるのは借主の善管注意義務違反です。
賃貸物件の退去清掃現場を多数手がける原状回復コンサルタントは、近年の現場状況について次のように指摘しています。
「冬場にサッシや壁が激しく結露していることを認識していながら、拭き取りを怠ってカビを繁殖させたり、換気を全く行わずに家具を壁に密着させて石膏ボードまで腐食させたりした場合、裁判例でも借主側の過失と認定されるケースがほとんどです。壁紙の張り替え費用は1平米あたり約1,000〜1,500円ですが、石膏ボードの交換や下地の防カビ処理まで及ぶと、6畳間でも4万〜8万円超の自己負担に発展します」
さらに、入居者が勝手に強力な塩素系洗剤を使って壁紙をまだら模様に変色させてしまった場合、クロスの一部分だけでなく「壁一面の張り替え」費用を請求される法的根拠を与えてしまいます。賃貸住宅でカビを発見した際は、自己流の乱暴な薬剤散布を避け、前述のエタノール等で初期除菌を行い、建物の構造的欠陥(雨漏りや外壁の断熱不良)が疑われる場合は速やかに管理会社へ書面やメールで状況を報告・記録しておくことが、最大の自己防衛策となります。