1871年1月18日、敵国フランスの象徴であるヴェルサイユ宮殿「鏡の間」において、歴史に残る痛烈な戴冠式が執り行われた。プロイセン国王ヴィルヘルム1世が初代ドイツ皇帝として即位を宣言し、ここにドイツ帝国の成立が天下に示されたのである。
包囲されたパリの市民が飢餓に苦しむ中で挙行されたこの儀式は、フランス人の自尊心を切り刻んだ。かつて欧州大陸の絶対的主役であったフランスの失脚と、中央ヨーロッパに突如として誕生した巨大軍事国家の登場。欧州の勢力図(バランス・オブ・パワー)は根底から破壊され、世界は新たな地政学的緊張の時代へと突入していった。