相手を欺き、金品を巻き上げる手口の根底には、時代を超えて共通する人間の心理的間隙が存在する。かつて日本中を騒然とさせたクヒオ大佐は、米軍将校という架空の華麗な肩書と奇抜な虚飾で女性たちを翻弄した古典的劇場型の象徴だった。外見やステータスを誇張して信用を勝ち取る手法は、古典的でありながら今なお形を変えて繰り返されている。
一方で、外見的な華やかさではなく、家庭的な温もりや献身的な態度を演じて深い依存関係を築き上げたのが木嶋佳苗の事件だった。被害者の「認められたい」「家庭を持ちたい」という根源的な欲求を鋭く見抜き、逃れられない精神的包囲網を築くその手腕は、世間に底知れぬ戦慄を与えた。
世界中で消費されるトゥルー・クライム作品が暴き出すように、詐欺師たちは常に時代の欲望を鏡のように映し出す。単なる嘘つきではない。彼らは標的の心の奥底に眠る不安を誰よりも早く察知し、完璧な救済者を演じ分ける心理操作の専門家なのだ。