1973年にリリースされ、一躍チューリップの名を全国区へと押し上げた大ヒット曲「心の旅」。この名曲の裏には、リーダーである彼が下した大きな苦渋の決断が存在していた。本来、自分で作詞作曲した楽曲は自ら歌うのが当然とされていた当時の音楽業界において、彼はあえてボーカルの座をメンバーの姫野達也に託したのだ。
自身の声質よりも、甘く爽やかな姫野の歌声の方が、この楽曲が持つ切なさとポップさを最大限に引き出せると直感したからである。自分のエゴを捨て、楽曲のクオリティと成功を最優先したこのプロデュース能力こそが、過酷なヒットチャートを勝ち抜く鍵となった。この劇的な決断がなければ、後のバンドの飛躍もなかったかもしれない。