家庭内での炊飯が激減する一方で、奇妙な逆転現象も起きている。コンビニエンスストア各社が展開する1個200円から300円超の「高級おにぎり」の売れ行きは極めて好調なのだ。具材が贅沢に乗せられ、銘柄米を使い、職人が握ったような食感を再現した商品は、棚に並ぶそばから売れていく。
現代人は米を嫌いになったわけではない。米を「炊く」という行為、後片付けの手間、そして5キロの重い袋を家まで運び、虫がわかないよう保管するストレスを忌避しているにすぎない。個食化が進んだ単身社会において、米は「自炊して腹を満たすもの」から「完成品を買い、一口の快楽を得る嗜好品」へと変貌を遂げた。この需要を裏付けるように、電子レンジで温めるだけの「無菌包装米飯(パックご飯)」市場だけが、家庭用米ビジネスの中で異例の急成長を記録している。