今回の問題が個人の嗜好論で済まされなかった理由は、使用されたシンボルの持つ重みにある。赤十字マークはジュネーブ条約や国内法(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)によって厳格に使用が制限されており、紛争地や災害現場における人道支援・救護活動の識別標識として国際的な保護を受けている。日本赤十字社も無断使用に対して強い懸念を表明した。
さらに深刻だったのが、東京都福祉保健局が普及を推進してきたヘルプマークとの類似性だ。外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている内部障害者、難病患者、義足使用者らが身につける命綱とも言えるマークである。これがファッションや商業グッズとして一般消費者に誤認されれば、緊急時の判断や電車の優先席での配慮を妨げかねない。当事者や医療・福祉の現場からは「マークの信頼性を損なう」という切実な危機感が寄せられた。