1990年代後半、日本のロックシーンは大きな変革期を迎えていた。当時、若き天才として脚光を浴びていた椎名林檎のバックを固めたのが、ギタリストの弥吉淳二である。彼はすでに吉川晃司をはじめ、名だたるトップミュージシャンのツアーやレコーディングに参加。業界内でもその確かな演奏技術と、楽曲の骨格を見抜く編曲センスに高い信頼が寄せられていた。
二人の関係性を語る上で欠かせないのが、屈指の名曲『ギブス』だ。繊細かつノイジーなギターリフ、感情の限界を打ち鳴らすようなサウンドメイキング。スタジオでの密度の高いやり取りから生まれたあの音像は、彼女が脳内で鳴らしていた孤高のヴィジョンを、彼が圧倒的なギターワークで具現化した瞬間だったと言える。ノイズすらも美しいメロディへと昇華させる彼のセンスが、名曲の核心を穿っていた。