大宝律令がもたらした最大の変革は、太政官を頂点とする官僚機構の制度化である。刑法にあたる「律」と行政法・民法にあたる「令」を整備したことで、それまで有力豪族の私的な武力や血縁ネットワークに依存していた古代政治史のパワーバランスは崩壊した。
太政官を中心とする合議制は、表面的には独裁を防ぐ合理的なシステムに見えた。しかし実態は、位階制度と官職を握る特定の貴族層による権力の寡占装置でもあった。貴族たちは自らの権限を法的に正当化し、地方豪族や民衆からの収税システムを中央へ一元化。官位を得られない旧来の豪族層を徹底的に周縁化していく冷厳な階級再編が、この法体制によって強行されたのである。