地震ニュースでアスペリティと並んで頻出する概念が「スロースリップ(ゆっくりすべり)」です。両者はプレート境界面で起きる現象ですが、その力学的性質と危険性の現れ方は対極に位置します。
最大の違いは「断層が滑る速度」と「地震波の有無」にあります。
アスペリティは普段完全に固着しており、全く滑りません。限界に達した瞬間に秒速数メートルという超高速で破壊され、激しい揺れ(地震波)を伴う大地震を引き起こします。
一方、スロースリップが発生する領域は固着が比較的弱く、数日から数か月、場合によっては数年かけて数センチメートルずつズルズルと滑ります。揺れを感じるような地震波はほとんど発生しないため、地上の人間が体感することはありません。GNSS(高精度衛星測位)や海底傾斜計などの精密観測機器によって初めて検知されます。
警戒すべき点は、スロースリップが発生すると、その周囲にある未破壊のアスペリティに応力(ストレス)が押し付けられるという力学連動です。ゆっくり滑った領域の歪みが隣接するアスペリティに転嫁され、結果として大地震の発生タイミングを早めるトリガーになるリスクを孕んでいます。