相撲協会の歴史上、最も世間の耳目を集め、組織に亀裂を生んだ出来事の一つが、平成20年代に巻き起こった「貴乃花親方(元横綱)の理事長選出馬と落選劇」です。
日本相撲協会の理事長選出は、まず約100名の親方衆(年寄名跡保持者)による投票で「10名の親方理事」を選び、その選ばれた理事たち(外部理事を含む)による「互選(理事による投票・合意)」によって決定される二段階の仕組みを採用しています。
2010年、当時二所ノ関一門に所属していた貴乃花親方は、一門の事前調整を無視して理事選に強行出馬しました。いわゆる「貴乃花の乱」です。若手親方層の支持を集めて見事に理事当選を果たした貴乃花親方は、旧態依然とした協会運営の打破を掲げ、将来の理事長候補として急浮上しました。
しかし、決定的な転換点となったのが、北の湖理事長の急逝に伴い実施された2016年の理事長選挙でした。協会内での改革路線を巡り、現職代行を務めていた八角親方と、改革派の旗頭であった貴乃花親方が真っ向から激突しました。結果は、理事による投票で「八角親方:6票、貴乃花親方:4票」となり、貴乃花親方は落選を喫しました。
落選の真相には、急進的な改革姿勢に対するベテラン親方衆や外部理事の警戒感、そして一門の結束を固め直した主流派の政治的立ち回りが存在していました。その後、2017年の元横綱日馬富士による傷害事件への対応などを巡って執行部との対立が決定的となり、2018年に貴乃花親方が協会を退職する引き金となったのです。