速報性が命となる報道の現場において、NHKをはじめとするテレビ局や、webニュースを展開するデジタルメディア業界のデスクたちが「いらすとや」を第一選択肢に挙げるのには明確な根拠がある。第1の理由は、視聴者や読者が一目で理解できる「視覚的な記号化」の完成度の高さだ。緊迫した状況下で過度にリアルな被害描写や写真を用いると、受け手に過剰な恐怖心やストレスを与えてしまうリスクがある。一方で、柔らかいタッチのイラストは心理的ハードルを下げ、必要な防災情報を冷徹かつ穏やかに伝える緩衝材として機能する。
第2の理由は、権利処理の圧倒的な簡便さにある。速報事故や突発災害のニュース制作では、画像の著作権許諾を得るために何時間も費やす余裕はない。規約の範囲内であれば即座に使用できるフリー素材としての利便性は、分刻みの締め切りに追われるジャーナリストやディレクターにとって強力な武器となる。そして第3の理由は、日本全国での圧倒的な認知度だ。見慣れた画風であるからこそ、老若男女を問わず「これは注意喚起の図解である」と直感的に理解されやすく、情報の伝達阻害が起きにくいのである。