名鉄三河線の猿投駅から西中金駅を結んでいた非電化区間、通称「山線」の廃止から時を経た現在、旧三河広瀬駅は地域のシンボル兼コミュニティスペースとして美しく保存されています。敷地に足を踏み入れると、どこか懐かしい木の香りと、静けさの中に漂うかつての賑わいの余韻が訪れる者を包み込みます。
木造平屋建ての瓦葺き駅舎は、1927年(昭和2年)の開業当時に建てられた典型的な近代私鉄建築です。腰板張りの外壁や小ぶりな切妻屋根、出札口(切符売り場)の格子窓など、随所に職人の意匠が息づいています。2007年には、駅舎本屋だけでなく玉石積みのプラットホームまでもが国の登録有形文化財に登録されました。
ホーム側へ回ると、草花に囲まれた線路と腕木式信号機を模したモニュメントが佇み、まるで今にもレールバス(気動車)が滑り込んでくるかのような錯覚を覚えます。駅舎の保存活動は地元有志による「広瀬の街づくり推進協議会」が中心となって丁寧に行われており、単なる廃線遺構にとどまらない温かな手入れが行き届いています。