東日本大震災における津波被害者の遺体損傷は、過去の自然災害と比較しても類を見ないほど多種多様かつ過酷な様相を呈していました。警察庁が公表した検視結果によると、震災による直接死の約90.6%が溺死(溺水)であり、圧死・損壊死が約4.2%、焼死が約1.4%を占めています。しかし、単なる水死にとどまらず、巨大津波が陸上の家屋、車両、電柱、コンクリート片を巻き込んで猛烈な破壊力を持つ「泥流」と化していたことが、損傷の度合いを深刻にしました。
多くの犠牲者は、時速数十キロで押し寄せた濁流の衝撃や漂流物との激しい衝突により、骨折や広範囲の皮下出血、挫滅傷を負っていました。また、引き波によって海中へ引きずり込まれ、海底の岩礁や沈下した瓦礫に擦れ、衣服が脱落した状態で発見されるケースも相次ぎました。3月の東北沿岸は水温・気温ともに氷点下に近く、津波を免れて建物の屋上や木の上に取り残されたものの、泥水に濡れた状態で力尽きた低体温症による犠牲者も少なくありませんでした。
さらに、気仙沼市などの一部地域では津波直後に重油タンクが倒壊して大規模な火災が発生し、水死した後に炎に包まれるという複合被害も見られました。重油や悪臭を放つヘドロが全身に強固に付着した遺体は、外見からの年齢や性別の判別すら困難にさせ、現場の捜索・収容活動に携わった人々に計り知れない心理的衝撃を与えました。