バレーボールは高さのスポーツだ。その絶対的な命題に対し、全身全霊で異を唱え続けたのが竹下佳江だった。2m超のブロッカーが並び立つネット越しに、わずか159cmのセッターが立つ。一見すれば圧倒的なミスマッチに映るその光景こそが、世界を恐れさせた戦場の真実だった。
彼女のトスワークには迷いがない。相手ブロックの踏み切り足の一瞬の遅れ、ミドルブロッカーの目線の泳ぎ、味方スパイカーのフォームの微妙な崩れ。コート上のあらゆる事象をミリ秒単位で処理し、最も確率の高いコースへボールを送り込む。2006年の世界選手権でチームを8位に導き、大会MVPに選出された快挙は、世界が彼女の「脳」と「指先」に屈した瞬間でもあった。
ロンドン五輪での銅メダルは、まさに執念の結実だった。傷だらけの体でボールを追い続け、最後の一球までコートを支配し切った姿は、日本中の人々の記憶に今も鮮明に焼き付いている。