グレーの囚人服を着た男は、ゆっくりと椅子に腰掛けた。細身の体躯に、鋭く尖った眼光。彼が語り始めた言葉は、驚くほど理路整然としていた。「後悔? そんなものはありませんよ。やるべきことをやっただけです」。男の声は低く、平坦だった。密室に響くその声は、事件当日の狂気とは対照的な、冷徹な理性を感じさせた。
事件は、熊本市内の商業ビルで発生した。男は猟銃と刃物を所持し、一般市民3人を人質に取って12時間にわたり立てこもった。特殊捜査班(SIT)の突入によって男は身柄を確保されたが、人質のうち1人が重傷を負う悲劇となった。なぜ、この場所だったのか。男は「誰でもよかったわけじゃない。社会に最も大きなインパクトを与える場所を選んだ」と嘯く。