このトンネルを語る上で避けて通れないのが、新名神高速道路建設プロジェクトにおける数々の技術的苦難だ。鈴鹿山脈の複雑な地質構造に挑んだこの事業は、高度な土木技術が集結した一大国家プロジェクトであった。
事業を推進したNEXCO中日本は、脆弱な地盤と突発的な湧水に幾度となく直面した。三重県亀山市の山岳地帯に巨大なトンネルを穿つ作業は危険と隣り合わせであり、工期の遅れや安全確保に多大なエネルギーが注がれた。
こうした過酷な建設史が、いつしか現場作業員の体験談や周辺地域の口承と結びつき、怪異の物語へと変貌を遂げたと考えられる。交通インフラ産業が誇る最先端の工法と、自然の威容とのせめぎ合いこそが、この場所に特別な物語性を与えた根源と言える。