西洋哲学の源流を遡ると、対立の概念そのものが現代とは異なる相貌を見せる。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、道徳的な徳を「過剰」と「不足」の両極端の間にある「中庸(メソテース)」として定義した。彼のアプローチにおいて、徳の反対にあるものは単一の対義語ではなく、行き過ぎと不十分さの両方だった。
この視点に立てば、過度な正義感や偏執的な執着もまた、別の形をとった「悪」の側面に分類され得る。哲学・倫理学の知見は、正邪の二者択一という単純な枠組みを解体し、人間の行動を多角的に分析するための強靭な理論的枠組みを提供してくれる。