歴代の法務大臣を振り返ると、その執行に対する姿勢は「積極派」「原則執行派」「慎重・見送り派」へと明確に分かれます。政治家の信条や哲学がこれほどダイレクトに反映される閣僚ポストは他にありません。
歴代法務大臣の死刑執行実績データ
平成以降における主な法務大臣の死刑執行実績を比較すると、突出した数値を記録した大臣が存在します。
平成以降の最多執行数を誇る上川陽子氏は、2018年7月に社会を震撼させたオウム真理教事件の一連の幹部13名(麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚を含む)への執行命令を下しました。記者会見で上川氏は「鏡を磨いて磨いて磨き尽くす心境で臨んだ」と語り、法治国家の規律維持と被害者感情の双方を背負った極限の決断であったことを明かしています。
サインを拒否・見送った法務大臣たちの論理
一方で、自らの職務執行を拒否、あるいは在任中に一度もサインを行わなかった大臣たちも歴史に名を刻んでいます。
1990年に就任した左藤恵氏は、仏教(浄土真宗)の僧侶でもありました。就任直後から「仏の教えとして不殺生を重んじる」という確固たる信念のもと、死刑執行命令書への署名を頑として拒み続け、約1年間の在任期間中の執行数はゼロとなりました。
さらに2005年、小泉内閣で法務大臣に就任した杉浦正健氏は、就任当夜の記者会見で「死刑執行のサインはしない。これは私の信念、哲学、宗教観によるものだ」と公言しました。この発言は「法務大臣の法的義務を放棄しているのではないか」と猛烈な批判を浴び、杉浦氏はわずか1時間後に発言を撤回。しかし、結果として約11ヶ月の在任期間中に死刑執行命令書に署名することは一度もありませんでした。