南館の中央に聳え立つ巨大オブジェクト「富嶽三六〇」は、和紙で作られた圧倒的な存在感を誇る。時間経過とともに照明が切り替わり、朝焼けから静寂の夜へと移ろい行く富士山の表情を室内で克明に再現する仕掛けだ。日本画の美意識と現代の照明技術が融合した空間演出は、一瞬たりとも目を離せない緊張感を醸し出す。
展示室の深部へ進むと、江戸時代の巨匠・葛飾北斎が描いた『富嶽三十六景』の世界観を多角的に読み解くコーナーが広がる。北斎の眼差しを通じて描かれたかつての景観と、現代の富士山が放つ威厳が交錯するレイアウトは秀逸の一言。現代建築家が手掛けた木のぬくもり溢れる格子デザインと相まって、空間全体がまるで一つの芸術作品として息づいている。