この店を訪れて串を頼まない手はない。一般的な蒲焼とは異なり、多彩な部位を少しずつ味わい尽くす鰻串焼きこそが、真骨頂であるからだ。だが、初めて訪れた客は品書きの多様さに圧倒されることが多い。「くりから」「短冊」「きも」「かぶと」「ひれ」「ばら」。聞き慣れない部位の名前が並ぶ。
常連客が席に着くなり通な頼み方をするのには理由がある。希少部位は仕込みの数に限りがあり、早い時間帯で品切れになるからだ。まず頼むべきは、背肉を細長く切って串に巻きつけた「くりから」。わさび醤油や塩で食せば、鰻本来の力強い旨味と上質な脂が舌の上で弾ける。続いて、ニラを巻いて香ばしく焼き上げた「ひれ」や、骨周りの濃厚な肉を味わう「ばら」をタレでいく。注文のコツは、着席直後に「一通り(串の盛り合わせ)」を頼みつつ、本日のおすすめ希少串の残数をさりげなく確認すること。この流れるような注文術さえ身につければ、極上の酒宴が約束される。