三谷幸喜氏の緻密な脚本が称賛される大きな要因は、犯人たちの犯行動機に単なる金銭欲や狂気だけではない「人間味と悲哀」が宿っている点です。
第1シリーズの記念すべき第1話に登場した中森明菜さん演じる小石川ちなみは、自分を弄び裏切った恋人を別荘の地下金庫に閉じ込めました。犯行後に降りしきる雨の中、絶望に沈む彼女に対して古畑がかけた「たとえ明日死ぬとしても、今夜のうちにできることはたくさんあります」という言葉は、シリーズを象徴する屈指の名セリフとして語り継がれています。
また、津川雅彦さん演じる作家・安斎亨の回では、妻を寝取った友人への復讐のために「自らの頭部を友人に撃たせることで相手を殺人犯に仕立て上げる」という狂気のアリバイトリックが描かれました。犯人たちが抱くプライド、嫉妬、守るべき愛など、複雑な感情の機微を古畑が鋭い洞察力で解き明かしていく過程こそが、視聴者の心を掴んで離さない理由です。