「漢方薬は天然由来だから副作用がない」という認識は明白な誤謬です。厚生労働省の医薬品副作用データベースおよび添付文書において、桂枝加竜骨牡蛎湯の副作用として最も警戒すべきは、構成生薬である「甘草(カンゾウ)」に起因する偽アルドステロン症とそれに伴うミオパチー(低カリウム血症による筋肉障害)です。
甘草の主成分であるグリチルリチン酸を長期間あるいは過剰に摂取すると、腎臓でのカリウム排泄が促進され、ナトリウムと水分が体内に貯留します。これにより、血圧上昇、むくみ(浮腫)、脱力感、手足のしびれといった症状が出現します。特に複数の漢方薬を併用している場合や、甘草を含む風邪薬、胃腸薬を重ねて服用している場合は、1日あたりの甘草総量が過多になりやすいため細心の注意が必要です。また、極めて稀ではあるものの、発熱や咳を伴う間質性肺炎、肝機能障害(AST・ALTの上昇)の初期症状にも留意しなければなりません。
服用にあたって遵守すべき鉄則が、桂枝加竜骨牡蛎湯 飲むタイミング食前という用法です。漢方エキス製剤は、食事の30分から1時間前の空腹時、あるいは食間(食後2時間程度の胃が空っぽの状態)に、ぬるま湯で服用するのが基本です。胃内に食物が存在すると、胃酸や食物残渣によって生薬成分の腸内細菌による代謝・吸収が阻害され、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が低下してしまいます。味が苦手な場合でも、冷水ではなく白湯で溶かすように飲むことで、生薬の香気成分が嗅覚を刺激し、副交感神経を優位にする相乗効果が得られます。