JR宗谷本線の音威子府駅構内で長年愛されてきた立ち食いそば店「常盤軒」は、鉄道旅を愛する人々にとって聖地のような場所でした。厳しい寒さのなか、駅の待合室に漂う湯気と出汁の香りに誘われてすする一杯は、多くの旅情をかき立ててきた名物です。
転機が訪れたのは2026年2月のことでした。長年にわたり厨房に立ち続けた店主の西名敏夫さんが80歳代で急逝。後継者がいなかったこともあり、常盤軒は惜しまれつつも半世紀以上の歴史に幕を下ろしました。駅構内から名物そばが消えたニュースは、全国の鉄道ファンに大きな衝撃を与えました。
さらに追い打ちをかけたのが、その独特な黒い麺を一手に製造していた唯一の製麺所「畠山製麺」の廃業です。創業90年近い歴史を誇る同社でしたが、代表の高齢化と製造機械の老朽化が限界に達し、2026年8月末をもって製麺事業を終了。これにより、駅そばだけでなく、村内の飲食店や全国への出荷を含めた「オリジナルの音威子府そば」が完全に姿を消すこととなりました。