呪術的な境界突破の手段として始まった「道」の概念は、時代を下るにつれて極めて高度な思想的抽象化を遂げた。その到達点を示すのが、古代中国の思想家・老子が唱えた東洋哲学の根幹をなす「道(タオ)」である。
老子の著した『道徳経』において、「道」は宇宙の万物を生み出す根源的な法則、あるいは言葉では表現しきれない不可視の真理として位置づけられた。そこでは、物理的な路地や邪気を払う行事を超えて、「あるがままに生きる」という無為自然の哲学へと華麗な変容を遂げている。殺伐とした呪術儀礼から始まった言葉が、人間の精神的救済や宇宙観の象徴へと昇華したプロセスは、言語思想史における極めて刺激的なドラマといえる。