物語が終盤へと突入するにつれ、アフレコ現場の空気は異様なまでの緊張感に包まれていた。「黒いヒーロー編」以降、すべてを独りで背負い込み、心身ともにボロボロになりながら雨中を疾走するデクを演じるにあたり、山下は自身のコンディションを極限まで追い詰めた状態でマイクの前に立ったという。スタジオ内には、喉が張り裂けんばかりの絶叫が幾度となく響き渡り、スタッフも息を呑んでその熱量を見守った。
「綺麗に整えて演じてしまえば、デクの覚悟が嘘になってしまう」。そう語る彼の演技は、計算された技術の枠を超え、魂のぶつかり合いそのものだった。共演陣もまた彼の気迫に呼応するようにボルテージを上げ、スタジオ全体が一つの戦場のような熱気に包まれていた。台本を握りしめる指先が白くなるほどの極限状態。収録後にはしばらく立ち上がることすらできなかったというエピソードは、まさに命を削って役に命を吹き込んだ証左である。