「なぜ『けいおん!大学編』はアニメ化されないのか?」という疑問に対しては、アニメ業界の制作事情や演出上の美学から3つの明確な理由が浮かび上がってきます。
第1の理由は、京都アニメーションと山田尚子監督が『映画 けいおん!』で描いたテーマの完成度です。アニメ本編は第2期最終回と劇場版において、3年生の高校卒業とあずにゃんへの楽曲「天使にふれたよ!」の演奏をもって、ひとつの青春群像劇として完璧なピリオドを打ちました。制作陣にとって「高校の放課後」という限られた時間こそが作品の核であり、大学進学後の物語を描くことは作品のテーマ性を薄めかねないという判断があったと推察されます。
第2の理由は、アニメ化に必要な原作ストックの物理的不足です。『college』も『highschool』もそれぞれ単行本1巻分しか存在しません。1クールのテレビアニメ(全12話前後)を制作するには大幅なオリジナル展開の補完が必要となり、原作の分量とアニメビジネスの採算ラインが噛み合わなかった側面があります。
第3の理由は、京都アニメーションの制作ラインと権利ビジネスの転換です。京アニは2010年代半ば以降、自社レーベル(KAエスマ文庫)を中心とした自社IPの映像化へシフトしました。ポニーキャニオンや芳文社が主導する外部版権の続編企画が立ち上がりにくくなった点も、アニメ3期の実現を阻んだ要因のひとつです。