政治的・軍事的なドタバタ劇が、いかにして子ども向けの無邪気な童話へと変貌を遂げたのか。そこにはビクトリア朝イギリスにおける「幼少期の再発明」という文化史的背景が存在する。19世紀後半、産業革命によって急速に都市化が進む中、過酷な労働から子どもたちを守り、無垢な存在として育てるための新ジャンルとして児童文学が花開いた。
キャロルは『鏡の国のアリス』第6章で、アリスとこの偏屈なキャラクターを対話させている。彼は「僕が言葉を使うとき、その言葉は僕が選んだ意味以外の何物でもない」と豪語する傲慢な知性の象徴として描かれた。政治的な流血の歴史を覆い隠し、哲学的な言語遊戯の衣装を着せることで、かつての危険な風刺歌は安全な教育コンテンツへと脱臭されたのだ。