成長期真っ只中にある中学生において、脳と身体の健全な発達を支える睡眠時間の基準はどこにあるのか。米国睡眠医学会(AASM)や国内外の小児神経科専門医が推奨する中学生の理想的な睡眠時間は「8〜10時間」である。日中の疲労回復だけでなく、脳内の情報整理や神経ネットワークの再構築には最低でも8時間の連続した睡眠が欠かせない。
しかし、文部科学省が実施した睡眠調査の最新データや教育現場の実態調査を俯瞰すると、推奨値と実態の間には深刻な乖離が生じている。中学1年生では平均7時間30分前後を維持しているケースが見られるものの、学年が上がるにつれて就寝時刻は深夜へずれ込み、中学3年生では平均睡眠時間が6時間台前半にまで激減している。
「6時間寝ていれば活動できる」と考える保護者や生徒自身も少なくない。だが、大人の基準を思春期の身体に当てはめるのは極めて危険だ。わずか1〜2時間の睡眠不足であっても、それが数週間続けば脳機能は「一晩徹夜した状態」と同等まで低下することが睡眠科学の研究で実証されている。