現地に入って目にしたのは、美しくも残酷な熱帯雨林の現実だった。世界最古級の歴史を持つ広大な森では、アブラヤシ農園(パーム油農園)の開発や違法伐採、さらには地球温暖化に伴う異常気象によって、数多くの固有種が追い詰められている。一本の巨大な樹木が倒れるたび、そこに依存していた無数の生命の連鎖が容赦なく断ち切られていく。
科学者たちが「生態系崩壊の境界線(ティッピング・ポイント)」と呼ぶ現象は、もはや遠い未来の警告ではない。森の断片化が進んだことで野生動物の生息域は寸断され、遺伝的多様性の消失という静寂な危機が刻一刻と進行している。木々の間を飛び交う鳥の羽ばたきが消え、静まり返った森林エリアの光景は、人類に対する沈黙の告発そのものであった。