南米においてカピバラが食用として定着した背景には、過酷な自然環境と宗教的な歴史が深く関わっています。特にオリノコ川流域の大平原地帯「ロス・リャノス」が広がるベネズエラやコロンビアでは、先住民族の時代から野生のカピバラが貴重な滋養源として狩猟されてきました。
この食習慣を決定づけたのが、18世紀初頭に下されたローマ教皇庁(バチカン)の異例の裁定です。カトリックの戒律では、イースター(復活祭)に先立つ40日間の「四旬節」において肉食が禁じられ、魚類の摂取のみが許可されます。当時、宣教師たちは「水中で生活し、足に水かきを持つカピバラは魚類とみなせるのではないか」とバチカンへ請願を出しました。これを受理した教会側がカピバラを公認したことで、断食期間中の貴重なタンパク質として広く食べられるようになったのです。
現在でも現地では、計画的な牧場飼育や許可制の狩猟管理が行われており、過度な乱獲を防ぎつつ伝統の味を受け継ぐエコシステムが構築されています。