ヤナセの歴史は、創業者の柳瀬長太郎、そして「輸入車王」と呼ばれた柳瀬次郎の存在抜きには語れない。柳瀬俊一郎はこの由緒ある同族経営の系譜に身を置き、同社が日本の自動車市場で独自の地位を確立するプロセスを支えた。
終戦直後の日本において、外国車の輸入は極めて厳しい外貨制限下にあった。政府の規制や国産車保護政策が立ちはだかる中、ヤナセは海外メーカーとの信頼関係を地道に構築。俊一郎はその現場で、国際ビジネスのシビアな交渉と日本国内の需要掘り起こしの双方を身をもって体現していった。
同族経営には特有の光と影がつきまとう。トップダウンの強いリーダーシップが迅速な意思決定を可能にする一方で、組織の硬直化や事業継承の難しさが常に課題となる。俊一郎は経営陣の一員として、創業者一族のビジョンを現場に落とし込み、急成長する組織のバランスを保つ重責を担った。