瀧本幹也の構図に対する尋常ではないこだわりは、建築や都市空間を題材にした作品群で遺憾なく発揮されます。2005年リリースの『BAUHAUS DESSAU 1919-1933』は、近代デザインの聖地であるバウハウス・デッサウ校舎を被写体にした一冊です。
幾何学と影の設計図
ヴァルター・グロピウスが設計した建築物に差し込む太陽光。窓枠の影が床に描く幾何学模様。瀧本は過剰な演出を削ぎ落とし、純粋な造形美として空間を切り取りました。建築写真というジャンルに、光の質感という情緒を持ち込んだ先駆的なアプローチです。
一方、2021年の『CROSSING』では、世界で最も過密な交差点の一つである渋谷スクランブル交差点をモチーフに選びました。高所から真下に向けられたレンズは、交差する人々の影、傘の色彩、アスファルトの白線を幾何学的な抽象画へと変容させました。都市の日常風景が写真集の装丁の中でまったく新しい視覚体験へと変化しています。