この事件を語る上で欠かせないのが、被害者の夫である高羽悟さんの存在だ。事件発生以来、高羽さんは現場となったアパートの一室の契約を一度も解除することなく、毎月の家賃を払い続けている。「事件当時のままにしておくことで、何か新たな手掛かりが見つかるかもしれない」「妻が生きていた最後の空間を消したくない」。その想いが、彼を突き動かしてきた。
高羽悟さんは街頭でのビラ配り、独自の聞き込み取材、そしてメディアへの積極的な出演を絶やさない。時が経つにつれて周囲の記憶が薄れ、事件の存在自体が忘れ去られていく恐怖。それと戦い続けることこそが、遺族に課された過酷な日常だった。
現場を保存し続けるという行為は、精神的にも経済的にも並大抵の覚悟では続けられない。しかし、その執念があったからこそ、この事件は人々の記憶から消えることなく、警察の捜査体制を鼓舞し続ける強烈な動機となってきた。