さつまいも市場において、安納芋や紅はるかに代表される高糖度・蜜系品種が脚光を浴びる一方、本物志向の料理人やさつまいも愛好家から「最終的に戻ってくるのはやはりこの味」と称賛されるのが鳴門金時です。
鳴門金時は、高系14号と呼ばれる品種から選抜育成され、徳島県の指定地域でのみ栽培が許可されている地域団体商標登録ブランドです。その最大の特徴は、鮮やかな紅色の外皮と、加熱した際に現れる黄金色の果肉にあります。鳴門金時の特徴と糖度を数値で見ると、収穫直後の生の状態で糖度10〜12度前後、適切に加熱調理を行うことで糖度30度〜40度前後まで引き出されます。蜜系品種のようにシロップ状の甘さが際立つのではなく、デンプン質のきめ細やかな結晶が舌の上でほどけ、上質な和菓子のような後味を残します。
この比類なき品質を支えているのが、徳島県産鳴門金時の産地が持つ類まれなテロワール(生育環境)です。主な産地である鳴門市、松茂町、徳島市川内町などは、吉野川河口や瀬戸内海沿岸の砂地地帯に広がっています。海砂を客土した水はけ抜群の圃場は、余分な水分を素早く排出しつつ、海水由来の天然ミネラル分を土壌に供給します。水分ストレスと豊富なミネラルを適度に受けることで、芋は締まりよく育ち、特有のホクホク感と繊細な甘みを凝縮させていきます。
地域内には複数の名門出荷組合が存在し、なかでも鳴門市里浦町で生産される鳴門金時ブランド「里むすめ」や、松茂町の「松茂美人」は、徹底した選果基準と土壌管理により、市場関係者から別格の評価を受けています。